CASE
STUDY 5
有限会社シンムラ 様
豚衡機は「豚に可哀想」とずっと思っていた。
新しい道具に合わせて働き方も新しくすべき。
誤差は±2kg、以前より時間短縮を実現。
デジタル技術で養豚をバージョンアップしたい。
有限会社シンムラ
本社所在地 | 富山県魚津市黒沢 |
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農場規模 | 肥育農場 |
年間出荷頭数 | 4,000頭 |
従業員数 | 3名 |
肥育豚種類 | TOPIGS |
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出荷基準体重 | 117kg以上 |
デジタル目勘導入時期 | 2021年4月 |
デジタル目勘利用台数 | 1台(全社で6台) |
シンムラグループの6つある肥育農場のひとつ
当農場は新潟県と富山県に展開するシンムラグループの6つある肥育農場のひとつです。冷涼で空気の綺麗な山間部にあり、平地より2度ほど平均気温が低く養豚にとって良い環境です。農場は5豚舎からなり、豚舎内は平均16豚房、約18頭/房となっています。
従来は、出荷の1週間前に約110kgになる豚を探し、豚衡機で計測、日増体を約1kgとして、1週間後に出荷していました。週2回、月曜と金曜に2人1組で体重測定するのですが、1回の出荷で約40頭出荷するとして、約2.5倍の100頭近くは測ることになります。きつい作業であり、特に夏場は大変です。
体重測定は人にも豚にもきつい作業
私は以前から、体重測定は豚にもきつい作業だと思っていました。甘いのかもしれませんが、ハアハアと肩で息を切らしてバテる豚を見ると、「可哀想だな」といつも思っていました。出荷前にキチンと測り、適正な価値で出荷してあげるのは、この世に生を受けた豚に対して、我々が出来る最大の供養だと思います。しかし豚にストレスをかけずにこれをやる方法は他に無いものだろうか、とずっと考えてきました。
そんな時、21年2月にアグロジャパンの山田さんから当社社長にデジタル目勘の紹介がありました。以前に新聞で「スマホで手軽に体重がわかる」という記事は見たことがあり、どんなものだろうか、とずっと興味は持っていました。農場長会議で社長から「デジタル目勘を使ってみたいか?」との話があり、私を含め農場長全員が「使ってみたい」と回答、21年4月から6農場全てに1台ずつ導入され、シンムラグループ一斉にデジタル目勘の運用が始まりました。
使いこなす努力こそ開発してくれた人への礼儀
デジタル目勘の納品日にはアグロジャパンさんと伊藤忠飼料さんも農場へ来てくれ、丁寧に操作指導をしてくれました。それでも最初は操作に慣れず、すぐには使えませんでした。
ただ私は、現場で使いこなす努力を最大限することが、新しい道具を開発してくれた人への礼儀だと考えています。まずは慣れるまで、道具が体に馴染むまでやる、という覚悟が大事です。そして「新しい道具に合わせ、全てを見直し、働き方も新しくするんだ」という意気込みで今も日々試行錯誤しています。
精度は±2kg、上物率も従来と遜色無し
まず精度良く撮影する工夫として、今は引付け役と撮影者の2人1組でやってます。長靴やホースの切れ端で豚の関心を引き、動きを止め、パッと撮影します。豚衡機だと選畜に4時間かかっていたのが2.5時間まで短縮しました。目標は1人で2.5時間を達成したいですね。
あと暗い方が精度と感度が良さそうなので、カーテンを閉め、電気を消して撮影しています。ただ夏場をどうするか、遮光ネットを張ることも含め、光の対策を検討中です。
デジタル目勘の精度は±2kgと問題無く、出荷後の枝肉上物率も従来と遜色ありません。でも作業時間短縮のため、自動撮影機能は使っていません。全てマニュアル撮影で1頭当り3回撮影し、その平均値を取るか、仮に1回でも綺麗に撮影出来ていればその数値を使います。自動撮影はシャッターが切れるまでが遅いので、豚房の中ではマニュアル撮影が性に合っていますね。
自動撮影の反応と水平補助の強化を希望
デジタル目勘が今後もバージョンアップするなら、次は自動撮影のシャッターを早く切れるようにして欲しいのと、センサー部の水平条件をもう少し緩和して欲しいですね。精度良く撮影する条件としてセンサー部の水平を保つのが重要ですが、最後は画面で確認しなければなりません。例えば、やや斜めから撮影しても結果の画像を補正、水平で撮影したように加工してくれるといいですね。撮影者は豚の動きに集中でき、撮影時間の短縮に繋がると思います。
デジタルで養豚業をバージョンアップしたい
デジタル目勘導入の目的は、決してラクになりたいだけではありません。若い世代はスマートフォンが身近にあり、デジタルを使いこなすのも得意です。私も45歳になり、徐々に未来の人材へバトンを渡す年齢に近づいていると思います。しかし、積み上げた技術を他人に渡すのは容易ではありません。そんな中、デジタル目勘は選畜感覚を伝える役割も担っていると思います。
こうしたデジタル技術を駆使し、養豚業をバージョンアップし、新しい人が養豚業に溶け込みやすくなればと思います。それが当農場、会社全体、そして養豚業界の発展に繋がればと考えています。